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変身 モルフォ蝶

もしも、愛する人が・・・

高原の山中で
若い男女は数奇な運命に
アンバランスゾーンは容赦なく入り込む

ギャラリー

「ウルトラQ」ストーリー

第22話 変身
放映昭和41年(1966年)5月29日
制作No.3 昭和39年(1964年)10月〜11月中旬
視聴率 30.1%

[ストーリー] 八ヶ岳で雪男騒動が起こる。由利子の友人・あや子は、それは実は1年前に別れた婚約者の変わり果てた姿なのかもしれない旨を打ち明けた。2人で蓼科高原に出かけた際、珍種の蝶を追いかけて森の中をさまよい、蝶の燐粉を浴びて体に変調をきたしていたのだ。決心の末にあや子はもう一度その現場を訪れ、一の谷博士らと共に解決の扉を開こうとする。

ウルトラQ第22話 変身

[寸評] 冒頭から不気味な音楽で始まります。怪獣は登場せず、「アンバランス」としての要素が濃厚な物語です。八ヶ岳に雪男が現れたとして騒ぎになっているとき、由利子は友人のあや子から相談を受ける。なかなか口を開こうとしないあや子に問いただすと、1年前に婚約者・浩二とケンカ別れをしたのはウソなのだという。

以下は回想シーン。昆虫学者であった浩二は、あや子と蓼科高原へ行った際、アマゾン産の珍種のモルフォ蝶を発見して森の中まで追いかける。こんなところへ来てまで蝶を追いかけなくても、という気もしますが、このあたりがそもそもの破局の第一歩でしょうか(笑)。あや子はすぐに心配して追いかけるが、すでにそのとき浩二は多量の蝶の燐粉を浴び、「体が焼け付く」といって苦しそうだ。危険を感じて一時退避したあや子は再び懸命に森の中を探し続ける。そしてその末にあや子が見たものは、・・・浩二ではなく、体とともに心にまで変調をきたした「巨人」の姿であった。浩二の体は異常な変異を見せて、頭だけでもあや子が見上げてしまうような大男の姿に巨大化してしまったのだ。

主体が怪獣や宇宙人でない、生身の人間であるために、この設定にはどうしても理解に苦しむ部分を否定できないものの、だからこそ一層衝撃的であり、恐怖感を覚えてテレビの前で恍惚に引き込まれるのではないでしょうか。珍種とはいえ、蝶の燐粉でそこまで変化するものだろうか?とか、巨大化すると一切人間の言葉を話さないのはどう説明するのか、など、ツッコミどころは盛りだくさんですが、そこにあえて切り込むところが「ウルトラQ」の醍醐味なのです。

余談ですが、この「巨人」、理性を失って衣服を取り去っていても(というよりもサイズが合わないのでしょうが)、つけるべきところはしっかりつけているのですね。さすがに全裸であったら、女性は近寄れないし、由利子も撮影の暴挙にはおよばなかったでしょう(笑)。

恋人の悲痛な叫びは届くのか

あや子は一大決心の末、この雪男の正体を確認しに行き、由利子らとともに一の谷博士に相談するのであった。しかしこの一の谷博士ってあらためてスゴイ人なのだなあと感じます。巨大化した事実の解明だけでも大変なことなのに、それを元に戻す方法を簡単に思いついてしまうなんて、「ウルトラ」の世界の一歩上を行く存在ですね。まったく恐縮します。考えてみればウルトラマンも登場しないこのシリーズにおいて一の谷博士の存在がなかったら地球は大変なことになっていましたね。

あや子はすっかり変わり果てた婚約者に再会し、「山へ帰って!私をこれ以上苦しめないで」と泣きながら絶叫する。その姿は愛した人であったゆえの痛切な叫びであり、見る人を何ともいえない心境に駆り立てます。大男となった浩二は、本能的に恋人の存在を悟ったのか、一瞬苦悶の表情を見せるものの、目の前に来たあや子に手を上げようとしたとき、間一髪で一の谷博士の開発した秘密兵器が炸裂します。

ところで大男の写真を捉えた由利子はデスクに「よくやった」と称えられるが、由利子は複雑で浮かない表情だ。他社に差をつけたとして無邪気に喜ぶデスクを尻目にした対照的な表情は結構おかしく感じます。

ラストで再会するあや子と浩二・・・。一平はその姿をじっと見つめようとして万城目にクギをさされます。ナレーションがこの物語を締めくくりますが、「ウルトラQ」以前の、「アンバランス」としての要素が濃厚な話にはそのメッセージも実に奥深いものを感じます。

怪現象 巨大化した人間
キーパーソン 由利子の友人・あや子
解決の糸口 あや子の懸命の呼びかけ
解決アイテム X線放射
登場怪物 なし(「巨人」とはしないでおきます・・・あ、モルフォ蝶がいた)

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